Daytona2022
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巻頭特集 P.122016年、11年間会社の舵取りをしてきた鈴木から指名され、長年開発現場を担当してきた織田哲司が3代目社長に就任した。リーマンショック後、組織変更で開発から間接部門に移動した織田はこう振り返る。「リーマンショックから3年間、業績を立て直すために会社は大変な時期だった。私は間接的な部署で、会社のコアコンピタンス(圧倒的な強み)を強化する仕事につき、デイトナと業界を客観的にみる時間ができた。ライダーの集まる場所に通い、ライダーやバイクを観察。話を聞いていくうちに、なんとなく今後の方向性が見えるようになった」。間接部門での3年間が、その後の織田の考え方に大きな影響を与えた。2010年に再び二輪事業部の仕事に戻り、2012年二輪事業部長を経ての代表取締役就任だった。現在、第3次バイクブームと言われるバイク業界だが、織田は論理的で冷静な見方をする。「10年ほど前はバイク人口の減少が話題だった。バイクの登録台数をみると、減少しているのは原付2輪が多いことに気づく。小・中・大型バイクの登録台数はそれほど変わっていない。今バイク購入の中心層は55歳だが、20代の若いライダーも着実に増えている。さらに数年はリターンライダーが増えるだろう。今後も増えるライダーたちが、ずっとバイクライフを楽しんでもらうために、デイトナができることはまだまだあると思っている」。2018年、デイトナはツーリングテント・ST-IIを商品化。老舗のテントメーカー、キャンパルジャパンと共同開発した。きっかけはソロキャンプを趣味と公言し、年中キャンプツーリングを楽しむ織田の発案。10年ほど前、新たに道具を揃えようと首都圏でも有数のアウトドアショップを訪れた。ショップスタッフに「バイクに積める大きさのテントは?」と尋ね、これならと勧められた商品を購入。いざバイクに積もうとすると、ケースから数センチはみ出て積めないという経験をした。さらに自身でキャンプを楽しみながら、2輪と4輪のユーザー比率を観察したり、キャンプ道具の使い勝手を実際に身をもって検証した。「今はキャンプ道具が市場に山ほど溢れている。キャンプ経験のある自分でも、何を選べば良いか迷ってしまうほど。キャンプ初心者のライダーは尚更困るだろう。だったら、デイトナがツーリング向けのキャンプ道具を作れば、ライダーから喜ばれるのでは」と考えた。すぐに開発の指示を出したが、1年間は動きがなかった。やはり自分が主体的に動かねばと、自身でメーカーに連絡を取り、ツーリングテント開発の段取りを1961年生まれ、長年開発の現場を担当し、間接部門を経て2016年に第3代社長に就任。「すぐやる」ことを信条とし、社員とともにデイトナの更なる発展に注力する。可能であればバイクで通勤し、休みはキャンプツーリングと充実したバイクライフを自ら実践している。バイクを愛し、社長になった今でもバイク通勤する織田社長。つけた。バイク業界では先駆けの取り組みとなり、さまざまな商品の開発を見据え「デイトナアウトドアサプライ」としてブランド化した。一口にキャンプと言っても、4輪のファミリー層とライダーでは、道具に求める機能が変わってくる。デイトナ社内には織田以外にもキャンプを楽しむ社員が多数いる。社員たちは実際にキャンプツーリングでテーブルと椅子の高さや角度を細かく検討。さらに背もたれの高さもハイバックからミドルバックへと改良したり、積載性と拡張性を選べるシステムバックの開発など、ライダー専用と言える商品群へと発展させた。近年デイトナは二輪パーツ開発という枠組みを超えて、時代の変化を見据えながら、さまざまな領域に挑戦の場を広げている。中古バイクパーツ売買のスマートフォンアプリ末永くバイクライフを、楽しんでもらうために。キャンプすることで、わかったことがたくさんある。現・代表取締役社長織田哲司ここからまた、挑戦の歴史が始まる。2016(平成28年) 〜 常にライダーの目線で「新しい何か  Tetsuji Oda

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